徒然なる、谺の戯言日記。
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17 ところ変われば
「あーっ、暇だー! 出せーっ!! つーか、話し相手か、遊ぶもんよこせー!!!!」
絶叫する声は、いい感じに反響した。
じたばたしても始まらない、とはよく言ったものだが、それ以外にする事がなかった。
薄暗いこの部屋。
ぶっちゃけ、牢屋。
だって地下にある、しかも、通路側はきっちり鉄格子で他3面は石作りの壁。
魔王の手の者に捕らえられたお姫様―――もとい、琥珀は、暇で死にそうだった。
「うう、反応すらない………。誰かツッコミ募集ーっ!!」
空しい叫びだけがこだました。
何で琥珀がそんな状態になっているのか、状況は少し前まで遡る。
勿論、捕虜(?)なのだから、牢屋行きは当然至極の対応なのだろうが。
琳子を崖から突き落としてしまった―――知らなかったにしろ―――琥珀は、真っ青な顔で慌てて後を追おうとして、その場に崩れ落ちた。
躰が全く言う事を利かなくて、手足に力を入れてもピクリとも動かない。
頭を上げ様としても、上がらない。
ふぬぬぬっと踏ん張っているうちに、ひょい、と担がれた。
思わず叫んだが、それは声にすらならなくて、しっかりと非人間―――つまり魔族なのだが、捕獲されていた。
どうしようと焦る琥珀。動かない躰。そうこうしているうちに、ドラゴンの背にどさりと降ろされ、
「お、オレ、ドラゴンに乗ってるっ……!!」
歓喜に震えた。
それまでの全部を投げ捨てて、琥珀の意識はただ一点に注がれる。馬鹿だ。
そんな琥珀に上から、理解出来ない言葉で魔族が悔しげに呟き―――ドラゴンが羽ばたいた。
琥珀は再び感動である。
躰が動かないのが残念だった。
声が出ないのが悔しかった。
それでも、勢い付けて空へと舞い上がって―――――空だけだった視界に影というか、白いものが移りこんで、顔は動かないから限界ぎりぎりまで眼を走らせる。
白い人間!? とテンションが上がりかけたところで、その手に琳子の姿を認め、琥珀の顔から血の気が引いた。
元気だったら叫んでいただろう科白も声が出せないまま、その姿はあっと言う間に点になり、見えなくなる。
その瞬間、琥珀は本気で泣きそうになった。
むしろ涙を流していたのだが。
放置されたまま空を滑空し、涙も枯れるというか、諦めきった顔になった頃、ドラゴンは降下した。
半ば茫然としたまま、再び魔族に担がれてドラゴンを降りる。
琥珀の視界は、魔族の背中しか見えないのだが、彼の脳裏にあったのは1つだけだった。
それは壮大な危機感、そして恐怖。
(………り、琳ちゃんに、仕置きされる……っ!?)
自分がこの後どうなるのか、などという不安は全くなかった。
残念ながら。
そんなものを気にかける余裕など、彼には微塵も残されていなかった。
ただ、その念頭を支配していたのは―――――琳子に対する恐怖。
(こ、今回は不可抗力………には、ならないよな。だって崖から突き落として、助かったっぽぃけど、謝ってないし、そのまま別れたしっ………)
琥珀の躰は、動けなければ、声も出せないように、束縛の魔法がかけられていたのだが。
多分、そんなものがなくても、彼は微動だに出来なかったかもしれない。
(ご、ごめん。ごめんごめんごめんごめんっ………)
琥珀は、必死、むしろ決死の心で、聞こえないだろうが、琳子に謝り続けていた。
そうこうしている間に、琥珀を抱えた魔族は悠々とした足取りで、洋館、という表現の似合う、赴きある大きな館へと入って行く。
周囲の風景は全く見えないし―――見えたとしても―――一心不乱に土下座モードに突入しているため当然のように琥珀はそれに全く気付かなかった。
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「あーっ、暇だー! 出せーっ!! つーか、話し相手か、遊ぶもんよこせー!!!!」
絶叫する声は、いい感じに反響した。
じたばたしても始まらない、とはよく言ったものだが、それ以外にする事がなかった。
薄暗いこの部屋。
ぶっちゃけ、牢屋。
だって地下にある、しかも、通路側はきっちり鉄格子で他3面は石作りの壁。
魔王の手の者に捕らえられたお姫様―――もとい、琥珀は、暇で死にそうだった。
「うう、反応すらない………。誰かツッコミ募集ーっ!!」
空しい叫びだけがこだました。
何で琥珀がそんな状態になっているのか、状況は少し前まで遡る。
勿論、捕虜(?)なのだから、牢屋行きは当然至極の対応なのだろうが。
琳子を崖から突き落としてしまった―――知らなかったにしろ―――琥珀は、真っ青な顔で慌てて後を追おうとして、その場に崩れ落ちた。
躰が全く言う事を利かなくて、手足に力を入れてもピクリとも動かない。
頭を上げ様としても、上がらない。
ふぬぬぬっと踏ん張っているうちに、ひょい、と担がれた。
思わず叫んだが、それは声にすらならなくて、しっかりと非人間―――つまり魔族なのだが、捕獲されていた。
どうしようと焦る琥珀。動かない躰。そうこうしているうちに、ドラゴンの背にどさりと降ろされ、
「お、オレ、ドラゴンに乗ってるっ……!!」
歓喜に震えた。
それまでの全部を投げ捨てて、琥珀の意識はただ一点に注がれる。馬鹿だ。
そんな琥珀に上から、理解出来ない言葉で魔族が悔しげに呟き―――ドラゴンが羽ばたいた。
琥珀は再び感動である。
躰が動かないのが残念だった。
声が出ないのが悔しかった。
それでも、勢い付けて空へと舞い上がって―――――空だけだった視界に影というか、白いものが移りこんで、顔は動かないから限界ぎりぎりまで眼を走らせる。
白い人間!? とテンションが上がりかけたところで、その手に琳子の姿を認め、琥珀の顔から血の気が引いた。
元気だったら叫んでいただろう科白も声が出せないまま、その姿はあっと言う間に点になり、見えなくなる。
その瞬間、琥珀は本気で泣きそうになった。
むしろ涙を流していたのだが。
放置されたまま空を滑空し、涙も枯れるというか、諦めきった顔になった頃、ドラゴンは降下した。
半ば茫然としたまま、再び魔族に担がれてドラゴンを降りる。
琥珀の視界は、魔族の背中しか見えないのだが、彼の脳裏にあったのは1つだけだった。
それは壮大な危機感、そして恐怖。
(………り、琳ちゃんに、仕置きされる……っ!?)
自分がこの後どうなるのか、などという不安は全くなかった。
残念ながら。
そんなものを気にかける余裕など、彼には微塵も残されていなかった。
ただ、その念頭を支配していたのは―――――琳子に対する恐怖。
(こ、今回は不可抗力………には、ならないよな。だって崖から突き落として、助かったっぽぃけど、謝ってないし、そのまま別れたしっ………)
琥珀の躰は、動けなければ、声も出せないように、束縛の魔法がかけられていたのだが。
多分、そんなものがなくても、彼は微動だに出来なかったかもしれない。
(ご、ごめん。ごめんごめんごめんごめんっ………)
琥珀は、必死、むしろ決死の心で、聞こえないだろうが、琳子に謝り続けていた。
そうこうしている間に、琥珀を抱えた魔族は悠々とした足取りで、洋館、という表現の似合う、赴きある大きな館へと入って行く。
周囲の風景は全く見えないし―――見えたとしても―――一心不乱に土下座モードに突入しているため当然のように琥珀はそれに全く気付かなかった。
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