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This blog is Written by 小林 谺,Template by ねんまく,Photo by JOURNEY WITHIN,Powered by 忍者ブログ.
徒然なる、谺の戯言日記。
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 06 気付けば天蓋


 もそもそと布団を頭まで引き上げる。
 ごろっと左側を向き、すっぽり被った布団の中で開きかけた瞼を閉じた。

 今日は何かあったような気がするけど。

 僅かに浮上した頭で思うのはそんな事。
 眠いし寝心地が良いから、もう少し―――

「って、会議っ!?」

 慌てて飛び起きて、首を巡らす。
 枕もとに置いてある時計で時間を確認しようとし―――――私の時間は停止した。

「何処よ、ここ…?」

 視界に入ったのは、それはもうありえないくらいにゴテゴテした飾りと薄いブルーのレースが付いた、天蓋付きのベット。
 どうして私はこんな所で寝てたんだろうか。
 まかり間違っても、ここは私の部屋ではないし、そもそも、純和風作りの斎賀宅、こんなベットが存在しているわけがない。
 茫然とするな、という方が無理だ。
 頭を抱えるようにして、レースカーテンを押しのけながらベットから滑り降りて周囲を改めて見回した。
 その視界に映るのは、多分、12畳くらいの広さの室内。

「悪趣味な」

 正直な感想。
 一言で済ませればヨーロッパテイストといった所なんだろうけど、豪奢な作りも、きらびやかな装飾品も、純和風の落ち着いた雰囲気――寺だけに――で育った私からすれば、余計なもののように思える。
 普通の女の子だったら喜ぶかもしれないけど。
 私は部屋に余り物を置かないし、シックな色合いで纏めるのが好きだし。

 電気は付いてないけど光が差し込んで明るい室内に、首を傾げるよりも早く数歩進んだところで結論が出た。
 ベットの向こう側、日本の家とは思えないくらい高い天井から床まで伸びるのは、これまた薄いブルーのカーテン。全面カーテンである事を考えると、この部屋、片側は全部窓のようだ。ベットのある位置はきっちり閉じられていたが、それ以外の場所は開かれていて、薄手の白いレースカーテンだけ、光はそこから届いていた。

 ここはどこだろうかと思案しつつ、窓辺へと寄って行った私に、コンコン、と、2回、ドアをノックする音が届く。
 くるりと反転した私に、返事も待たずにドアが開いた。
 ゴテゴテしい飾りのドアノブ……とか余計な事を考えた私の前に、ドアの向こうから現した姿に、硬直する以外なかった。

 コスプレ…?

 何故か一礼し、目線は下げたまま部屋へと入ってくる。
 静かにドアを閉じて、振り返り、改めて顔を上げて、やっと私と目があった。というか、私に気付いた、といった方が正しいかもしれない。驚いた顔で、その動きを停止させたから。
 むしろ、驚きたいのはこちらなんですけど?

 静かな時間が流れる。
 私は訝しげな顔をしていたに違いないんだけど、相手は驚いた顔から、何故か嬉しそうな顔へ。

「お気づきになられたんですね」

 花だ。花が飛んでる。
 可愛らしい声でそう口にして、何故だか満面の笑み。
 っていうか、誰?

「あ、どこか痛いところはありますか? それとお腹は空いてませんか? それから 「いや、あなた、誰?」

 矢継ぎ早に言いながら歩み寄る姿に、身構えるようにして、それを遮った。
 ぴたり、と足が止まる。
 互いの距離は2メートルほど。
 驚いたような顔になってから、何故か苦笑する。
 言葉が通じなかった?
 いや、でもしっかり日本語を口にしていたし、かなり流暢に。

「失礼致しました。―――私、リエ=ナセレイタと申します」

 謝罪し、深々と一礼して、名乗った。
 間違ってないけど、違う。
 私が言いたいのはそういう事ではない。聞いた事もそうではない。

 にこにこと微笑むその姿は、可愛らしい。
 年齢は多分10代後半くらいだと思うけれど、顔立ちが日本人じゃないから断言出来ない。
 緩やかに波打つ、ふわふわしてそうな髪は、柔らかな茶系の金髪だし、嬉しそうな色だけを浮かべてる瞳は鮮明な蒼。明らかに西洋系の顔とあわせて、絶対日本人じゃないと言える。
 強いて言うなら、お人形さんみたいな感じだ。
 文句なしの美少女。
 美女と言わないのは、大人の女性という雰囲気を全く感じないから。

 って、そうじゃない。私。落ち着け。
 リエ=ナセレイタと名乗った姿を見つめる。
 うん、見覚えはない。
 名前にも聞き覚えはない。
 知らない人、これだけは間違いない。だのに、何故に相手はこんなに嬉しそうな顔で私を見ているのか。
 怪訝な顔してる人間をこれだけ満面の笑みを浮かべて見つめ返せるって、この人、頭のネジ緩んで―――って、落ち着こう、私。
 何気に失礼な事を考えた自分に、思わず額に手を当てて、冷静に、冷静に、と繰り返す。

「あの、大丈夫ですか? 頭痛が? それともやはりどこか痛みますか?」

 不安げな声をあげて近付く姿を、もう一度見つめる。
 声と同じように心配してる顔、というか、オロオロしてる。
 嘘を付いているようには見えないけれど、本当に、誰よ。

「大丈夫。別にどこも痛くないから」
「そうですか? 無理をされてませんか?」
「してないから。本当に平気」
「そうですか」

 安堵したような声と、自分のことのように嬉しそうな笑顔。
 でもそれ以上に気になったのが、すぐ傍まで来たからわかる、その身長差。
 この子小さい…150ないんじゃないだろうか?

「ええと、リエさん? で、いいのかな? 確認するけど、初対面よね?」
「はい。こうしてお会いするのは初めてになりますが、リエで結構ですよ」

 にこにこと、“さん”付けを訂正された。
 初対面の割に妙な事を言う、というか…初対面の相手に対する態度?
 明らかに、以前から私を知ってる人みたいな応対されてるような気がするんですけど?

「眠っていらっしゃったので、ご挨拶が送れましたが。私が身の回りをお世話させて頂きますから、敬称はいりませんので」
「は…?」

 思わず阿呆な声を上げた。顔には出てないだろうけど、無理もない。
 意味がわからない、身の回りの世話って、私、自分のことくらい自分で出来る―――て、そうじゃない。

「何故に、私が? というか、私の? あなた、どこの人? むしろ何処よ、ここ?」

 何言ってるんだか、私。
 でもそれって、きっと、正直な反応じゃないかと。
 笑顔が崩れるかと思ったんだけど、その美少女――リエは、笑みを称えたまま―――

「ミルファ王女様から、そのように申し付けられました。身に余る光栄です」

 そう、口にした。
 王女?
 王女っていうと、アレですか? 国のお姫様?
 今時、王政を取ってる国というと―――じゃなくて。何で私がそんな国賓待遇を受けるのかさっぱりわからないんですが?
 ていうか、問題はそこじゃない。
 ここは日本じゃないって事…?

「私は侍女巫女です。以前は給仕関係の役目に付いておりましたので、食べ物の好き嫌いがありましたら何なりとお申し付け下さいませ。私の方から給仕長へ話しをしますので」

 また謎な単語が出ました。侍女巫女って何?
 いや、侍女と巫女はそれぞれわかるけど。何その合体?

「それから、ここは、神聖レシル王国」

 にこにこと、笑顔のままで。
 意味不明な事をのたまった。
 待って、ちょっとどころか、かなり待って。意味がわかんないどころじゃない。
 神聖レシル王国って何? 聞いた事ないわ、そんな国。
 それとも私が知らないだけで地球にはそんな国があったって事?
 というか、パスポート使って海外渡航した覚えすら―――

「その王都レシリアに建つ、王城の一室です。勇者様」

 私の思考は全面停止した。
 むしろ動きも。

 国がどうとか、王都がどうとか、王城とか、ツッコミどころは満載だったけど、そんな言葉はどうでもいい。
 彼女の口にした一言が、全て。
 “勇者様”―――――。
 そう口にした視線の先にいるのは、間違いなく私。 そもそも私と彼女以外にこの部屋にはいないけれど。
 私を見て、はっきりと、そう言ったのだ。
 それはつまり、私が“それ”という事になる訳で。
 驚くとか喜ぶとか怒るとか哀しむとか、そんなの全部投げ捨てて。
 疑問に思うのも忘れて、ただ、私は固まるしかなかった。



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※召喚、2週間後。


1.あなたのお名前を教えて下さい。
  「斎賀琥珀。
   サイはね、斉藤さんの斉っていうのの1ランク上の難しい斎。
   1番難しい、齋っていうのじゃないよ。
   んで、ガはね、賀正のガ!
   コハクはね、鉱石の琥珀ってののまんまの字」

2.元の世界におけるあなたの身分を教えて下さい(学生、社会人等)
  「大学を出て、じーちゃんの後を次いで会社の社長になっちゃった。
   何で兄貴じゃなくてオレ何かなって思ったけどさ、じーちゃんが、
   琳子が付いてるから大丈夫って言うからイケるって思ったんだよなぁ。
   昔っから琳子がいれば何があっても平気だったからさ」

3.あなたの年齢を教えて下さい。
  「22歳。―――どうせ童顔だよ…ちくしょぉぉお」

4.あなたの性別を教えて下さい。
  「男。どっこをどう見ても男!
   いいか、男に可愛いなんて言っちゃ駄目なんだかんな!!」

5.あなたが召喚された(迷い込んだ)世界はどのようなところですか?
  「よくわっかんね。言葉通じないし。
   あ、独りだけ通じるヤツがいたよ、エライヤツみたいだったけど。
   とりあえず、琳子が無事でよかったんだけどさ~……はぁ。
   逢いたいけどさ~怖ぇええ」

6.その世界の文化レベルはどれくらいですか?
  「牢の中から部屋へ変わったんだけど外から鍵かかってさ、
   全然自由に出歩けないから何もわかんねぇよ~。
   ぁーでも、初めて連れてかれて言葉のわかるヤツにあったトコは、
   普通に書斎っぽぃ感じのトコだった。赤絨毯引いてあったけど。
   だから低くはないと思うんだよな。
   何か昔のトイレみたいなの牢屋にはあったし、
   部屋へ移った後はトイレが別にあったし。
   何つーかいわゆるぼっとんだけどな!!(爆笑)
   でもま~、飯は美味い!
   だから飢餓レベルとかってんじゃねーと思う。多分」

7.その世界では戦争をしていますか?
  「わかんねぇし…。
   でも侵略がどうのって言ってるから、物騒っちゃ物騒なのかなー」

8.剣、魔法、竜など、もとの世界では有り得ないものが存在しますか?
  「人間じゃないのはいっぱい見たよ。
   つーか人間がいないっぽぃよ、ここ!
   後、空飛んでるのとかSFXみたいなのとか」

9.正直な話、召喚された時どう思いましたか?
  「感動したね!
   男だったら一度は夢みるだろ? そういうもんって。
   ―――ま、すぐに捕まったから情けなさ過ぎなんだけどさ」

10.誰かに拾われましたか? もしくは生活を保障してくれる人と出会いましたか?
  「捕まった。
   ちゃんと食事出るし、今んとこ命の危険もなさそうな雰囲気だけどさ。
   でもつまんねぇし、琳子に怒られそうで怖いし…」

11.その人はどんな人ですか?
  「兵隊? みたいなヤツ。
   オレの面倒見てくれてるのも同じようなヤツだけど、
   それを命令したのは此処に連れて来られた時に逢った……。
   何てったっけか、ガズ…じゃなくて、ガジ…じゃなくて。
   まぁ、ガなんとかって男。
   黒髪でさーデコに眼があったんだよ。カッコイイとか思っちゃった。
   あはははははっ!!」

12.異世界におけるあなたの身分は何ですか?
  「何だろ…?
   とりあえず部屋に押し込められてるよ。
   牢屋じゃないだけマシだけど………捕虜?
   だとしたらエライ待遇いい気はするが」

13.それはどのような身分(あるいは役職)ですか?
  「さぁ?
   それより、これからどうなるのか教えて欲しいよ。
   オレ此処から出られんかな~、琳子に怒られるよぉ」

14.あなたの身分は高いですか? それとも低いですか?
  「捕まってる時点で……」

15.その身分に満足していますか?
  「出たいよ、満足なんかするか!
   ―――あーでも、喰いモノが上手いってのは捨てがたいっ!!」

16.友達、恋人、主君、部下など、特別な人は出来ましたか?
  「無理だろ…」

17.その人はどんな人ですか?(複数いる場合は好きなだけ答えて下さい)
  「イジメか?」

18.人間関係はうまくいっていますか?
  「会話が成立しないし、シカトされてるし、無理だろ…。
   琳子、助けてくれーっ!」

19.異世界で「これだけは我慢出来ない」ということはありますか?
  「会話できるヤツとしゃべりてぇええええ。
   後TVはないし、漫画もないし、ゲームもないし…ありえねぇ」

20.逆に「元の世界よりずっといい」と思うところは?
  「仕事しなくていいとこ?」

21.異世界で達成しようとしている目的はありますか?
  「ないよ。出られないし」

22.それはどんな目的ですか?
  「…………」

23.異世界で身につけた特技はありますか?(剣技、馬術など)
  「独りで3人分の会話をする事!
   ―――自慢できねぇえええええっ!!」

24.もう一般人(地球人)には戻れないと思いますか?
  「それはナイ。絶対ない。だって琳子がいるもん。
   不可能を可能にするぜ、琳子は。だからへーき。
   絶対オレの事も助けに来てくれるし、家にだって帰れる」

25.なぜ、自分が異世界に召喚された(迷い込んだ)んだと思いますか?
  「――――さ、さぁ?(視線逸らし)」

26.あなたは何か重大な使命を帯びていますか?
  「元いた場所では、一応会社の社長でエライ人なんだよ。
   一応……。今はただの……」

27.元の世界に帰りたいですか?
  「うん。
   いや、帰れなくてもいいから、琳子に逢いたい。
   怒られる前にとりあえず、土下座コースだよ、コレ…」

28.元の世界に帰る場合、「これだけは持って行きたい」というものはありますか?(連れて行きたい人でも可)
  「喰いモンが上手いから、そのレシピとか欲しいな~。
   もらえないかなぁ」

29.元の世界に戻るか、異世界に残るかを選べるとします。あなたはどちらを選びますか?(自分がどちらを選ぶと思うか、でも可)
  「帰らないと怒られるよ、琳子に」

30.お疲れ様でした。最後に一言どうぞ。
  「琳ちゃん、ごめんなさいぃいいいいいっ!!!!」


※質問はコチラのサイト様からお借りしています。
  La・campanella ~ラ・カンパネラ~ 様
※召喚、2週間後。


1.あなたのお名前を教えて下さい。
  「松浪琳子、ま、つ、な、み、り、ん、こ、です。
   変な発音にしたり、勝手に略さないで下さいね」

2.元の世界におけるあなたの身分を教えて下さい(学生、社会人等)
  「社長秘書です」

3.あなたの年齢を教えて下さい。
  「先月、26歳になりました」

4.あなたの性別を教えて下さい。
  「女性です」

5.あなたが召喚された(迷い込んだ)世界はどのようなところですか?
  「RPGに出てくるような世界。
   私が本来いるべき世界からすると、
テレビドラマやアニメの勧善懲悪物に多い、
   変身途中は攻撃しないといったような状況が普通に展開されています。
   正直、バカかと思います」

6.その世界の文化レベルはどれくらいですか?
  「私がいる所の生活水準は高いですね。
   中世のヨーロッパあたりのような印象を一見受けるのですけど、
   特に不便を感じないので生活水準はその当時より高いと思います。
   ただ、電気機器等は存在していませんが、
   同じ役割を魔法で担っているみたいですね」

7.その世界では戦争をしていますか?
  「国家間の争いというのはあるみたいです。
   ただ、現在お世話になっている所は平和そのもので、
   物語にある楽園みたいな印象を受けますね」

8.剣、魔法、竜など、もとの世界では有り得ないものが存在しますか?
  「ええ、お陰で大変困っています。
   人でない方々に関しては、
   時期の経過と共に容姿が違うだけですので慣れましたけど。
   剣に関しては学生時代剣道を精神鍛錬の一環として倣っていた程度で、
   命のやりとりなんて当然無理です。
   それに魔法なんて、そんなモノ使える訳がないじゃないですか…」

9.正直な話、召喚された時どう思いましたか?
  「性質の悪い冗談だと思いました。
   新商品の説明とテストを見るための会議へ向かう途中だったので、
   それだと思いました。
   リアルな体感RPGでしたし。間が悪すぎます」

10.誰かに拾われましたか? もしくは生活を保障してくれる人と出会いましたか?
  「最初に、こ…――――それはいいとして、
   頭に角を生やした筋肉質な方に襲われて、崖から落ちて、
   気付いたら私をこんな目に合わせた張本人に遭遇した、と。
   生活は保障されてますね。
   賃金を払えないので、その分は労働で返しているつもりです」

11.その人はどんな人ですか?
  「国の宰相を務めていて、ラッセル・アルベッキーノという方です。
   はた迷惑な話ですが、髪も眼も驚くくらい真っ白、肌も青白くて、
   難病を患っている方かと怒るよりも先に心配してしまったのが、
   初対面の印象です」

12.異世界におけるあなたの身分は何ですか?
  「身分……(凄く嫌そうな顔をして)、勇者とか呼ばれてます。
   身に覚えがないので辞めて欲しいのですけれどね…」

13.それはどのような身分(あるいは役職)ですか?
  「保護して下さった聖レシル王国において、
   王国存亡の危機、かつ、国民が直接手を下せない状況に陥った際に、
   余所(異世界)から人手を調達してきて、
   その問題を解決するという役目のようですね。
   過去に同じ目にあった方の文献を読ませて頂いた事と、
   色々な方の話を聞いての私の勝手な介錯ですが」

14.あなたの身分は高いですか? それとも低いですか?
  「高い低いというよりも、重宝されているという印象を受けます…。
   正直、凄く嫌です」

15.その身分に満足していますか?
  「嫌です。私は普通の生活がいい」

16.友達、恋人、主君、部下など、特別な人は出来ましたか?
  「今の所、友達は出来ましたけれど、特別と断言出来る人はいません。
   強いて言うなら、色々身の回りの事を気にかけてくれてるリエかな?
   妹みたいで可愛いんです」

17.その人はどんな人ですか?(複数いる場合は好きなだけ答えて下さい)
  「余り言いたくないけど、答えないと駄目なの?
   リエは、年の割に子供っぽぃというか純粋というか単純と言うか…。
   世間知らずではないのに保護欲をそそる存在と言いますか(苦笑)
   何ていうか、不思議な子です。
   大抵の事はこなせる、しっかりした女性なんですけどね」


18.人間関係はうまくいっていますか?
  「身近な所は上手くいってます。
   外の事は人の関係がよくわからないので何とも言えませんが、
   今の所、私にとっての難点は琥珀ですね。
   あのバカ!」

19.異世界で「これだけは我慢出来ない」ということはありますか?
  「男の琥珀が捕らわれのお姫様で、私が勇者と呼ばれてる所。
   逆でも嫌ですが…」

20.逆に「元の世界よりずっといい」と思うところは?
  「空気が綺麗です。
   自然も綺麗で、上手く調和できている所ですね。
   そういう所は凄く良いと思います」

21.異世界で達成しようとしている目的はありますか?
  「はい、あります。
   勇者と呼ばれても私はそんなモノではないので、
   彼らの望む結果を出せるとは思いませんし、
   私個人の目的とは別件になりますね」

22.それはどんな目的ですか?
  「琥珀を一発殴って、説教して、元の世界へ帰る事です。
   仕事へ行く途中でしたし」

23.異世界で身につけた特技はありますか?(剣技、馬術など)
  「特にありません。
   強いて言うならこの世界の言語を学習している途中です」

24.もう一般人(地球人)には戻れないと思いますか?
  「いえ、絶対に帰ります。仕事がありますから」

25.なぜ、自分が異世界に召喚された(迷い込んだ)んだと思いますか?
  「琥珀のせい。
   絶対そう!
   昔から、私にとって厄介ごとしか持ってこない疫病神なんだからっ!」

26.あなたは何か重大な使命を帯びていますか?
  「重大かどうかはわからないんですよね、実際問題として。
   だって一応…平和といえば平和なんです、此処。
   時々勘違いした変なのが来ますけど」

27.元の世界に帰りたいですか?
  「帰りたいです。
   業務が気になりますし、お爺様の様態だってとても心配です」

28.元の世界に帰る場合、「これだけは持って行きたい」というものはありますか?(連れて行きたい人でも可)
  「琥珀。首輪でも付けて繋いでおこうと思います、本気で」

29.元の世界に戻るか、異世界に残るかを選べるとします。あなたはどちらを選びますか?(自分がどちらを選ぶと思うか、でも可)
  「帰ります。
   馴染んできてるって言われますが、やっぱり私は異邦人ですからね」

30.お疲れ様でした。最後に一言どうぞ。
  「有り難うございました。
   琥珀を見かけたら、首を洗っておきなさいって伝えておいて下さいね」


※質問はコチラのサイト様からお借りしています。
  La・campanella ~ラ・カンパネラ~ 様
使用ブログを統一し作業効率のUPを目指すために、
単体で展開していた「寝言」をこちらへ移す事にしました。

→にある「リンク」を使って「寝言」のTOPページに移動可能です。
1度に全部はキツそうなので、少しずつ作業していく感じになります。
現在、01~05までの引越しが終了しました。
「小説目次」からのリンクは、引越しが全て終わった時点で張りなおします。


全部終わったら現行の「寝言」のページは消します。
それまでの間は重複している状態が続きますが、宜しくお願いします。
 05 そして、歯車は狂う


 4月になりました。
 春です、桜はまだ3部咲きという所ですけど、春です。
 今年は新入社員が――琥珀を入れて――4人。
 営業が1人、技術屋が2人、そして、正式に社長に就任した琥珀、と。
 入社式は昨日すませて、今日から業務開始です。

 開始、なんですけど……。

「琥珀っ! いい加減に起きなさいっ!!!!」

 いつの間にドアに鍵なんてかけたのよ!
 3日出張ででかけて、そのまま両親のお墓参りをして、昨日帰って来た。
 留守にしたのは4日、昨日こっちに戻って来て、そのまま入社式に出席して。 
 今日は早朝に全社員集合して朝礼、その後、各部署の代表会議をやるから、時間早いって言っておいたのに。
 さっきからドアを叩いてるのに起きる気配ゼロ……。

 面倒だから、いっそ壊して―――――て、落ち着け私。
 冷静に、冷静に。

「琥珀! 5秒以内に起きないと、おいてくからねっ!!」

 左手にはめた時計を見る。
 これで起きなければ、本当に、もう知らない。

「5」

 もう学生じゃないんだから、朝くらい一人で起きろって言うのよ。
 第一、昨日まではきちんと起きてたって竜馬さんが言ってたのに…。

「4」

 本当に社長なんて務まるのか、本気で心配。
 勿論、琥珀じゃなくて、会社の方が。
 倒産とか乗っ取られたりしなければいいけど…。

「3」

 会議の内容だって、説明したけど、絶対、興味ある部分しか覚えてないだろうし。
 琥珀だけに。
 最低3度は繰り返さないとならないってのに。

「2」

 寝惚けてても返事くらいするのに、それが全くないって事は、完全に熟睡してる。
 これだけ五月蝿くしてるのに、どうして起きないのよ、コイツは。

「1」

 ドアを叩くのをやめる。
 流石に手が痛んできたし、声も枯れ気味。
 朝から何でこんな疲れないといけないのよ……。

「0」

 しーん。
 無音……。
 起きてない、ね。
 お爺様、やっぱり、私にも無理だったみたいです。
 琥珀は調教できません…。

「―――なんて、言う訳ないでしょうがーっ!!!!!」

 どがぁんっ!

 痛恨の一撃。
 それはもう渾身の力を込めて、全身を絞って、左の拳を突き出した。
 当然、捻りを加えたコークスクリュー。
 これで私は鋼鉄の―――と、それはいい。

 問題は、この、結局壊してしまったドア、どうしよう………。
 勢い付いて飛んだドアは、1メートルほど先に落ちてる。
 どうして留め金ごと飛んでるんだろう、私は化け物か。
 それから。

「まだ寝てる…」

 聴覚壊れた? どうして今ので起きないのよ、コイツ。
 しかも幸せそうな顔してるし。
 せめて魘されて―――――て、そうじゃない。

 侵入。相変わらず雑多な物が多い部屋、成長の兆しが全く見られない。ゴミとか落ちてないだけマシなのかもしれないけど。
 壊れたドアを踏みつけて、布団の傍へ。
 どうでもいいけど寝相が悪すぎ。しかも大の字で寝てるって何様よ。
 未だ夢の中のこの男。
 さて、どうしてくれようか……。

「琥珀、起きる時間」

 言いながら、右の拳を腹部あたりにねじ込んだ。
 私は左利き。
 一応、手加減はしてる、つもり。

「うぇ……」

 熟睡中で緩んでるから、それはもう痛いでしょうね。
 横向いてくの字になって痛がる姿に、溜息を一つ。
 手加減はしても、琥珀に対して容赦するという言葉は何処かへ投げ捨ててある。

「起きた? さっさと用意して、仕事に行く時間」
「―――り、りんちゃ……」
「起きろって言ってるの!!」

 すぱこーん。

 フルスイングで後頭部を叩いた。
 思わず左手でやってしまったけど、平手だからきっと大丈夫。

「痛い……」

 涙目で後頭部をさすりつつ、躰を起こす。
 遅い。
 けど……、殴られる事に耐性でも付いたのかな。
 もう平気みたいな顔をして、瞼を擦ってる。

「叩いたから当たり前でしょう? それより、今日、朝早いって話をしたの、覚えてるよね?」
「あー……あ、ああ。うん? そうだっけぇえええん、覚えてる!」

 半眼で睨む。
 本当に忘れてた。
 やっぱりとしか言いようがないのが、哀しいけど……。
 途中から頷いたって、「そうだっけ」と言ってる時点で、バレると気付こうよ。
 学習能力がない、凄く今更だけど。

「…ちょ、朝礼と、えーと、会議……だっ、た?」
「そう。しっかりしてよね、今日から、“代理”が取れるんだから」
「あ、うん…。あはは、あんまよくわかんな 「5分で支度して」
「…ご飯食べ 「5分以内ならね」
「琳子、オレのこと嫌い?」

 朝から捨てられた仔犬にならないで欲しい…。
 こんな事してる余裕もないのに。

「うう、やっぱ嫌いか。黙ってるって事は」
「そうね。20歳超えてるのに、朝も自分で起きられないような人は」
「………ごめんなさい」
「後、4分18秒」
「減ってる!?」
「時間はどんどん過ぎるから」
「す、すぐ! すぐ用意するからっ、外で待ってて」
「二度寝したら置いてくからね」

 そう言ってきびすを返す。
 本当に、時間ギリギリなんだから。

「しないっ!!」
「遅れても置いて行くから」
「え゛」

 さっさと部屋を出て、入り口のところに置いてあった鞄を手に、玄関へ。
 これから毎朝こうなのかと思うと、溜息しか出てこない。
 
「これから大丈夫かな…―――と、しまった」

 人の事を言う前に、自分が忘れてる。
 新人歓迎会の案件、昨日必死に考えてまとめたヤツを忘れてる。
 毎年思うんだけど、何でコレを年度始めの重役会議で決めるのか謎だ。
 参加者全員が内容考えてくるってのも更に謎だし、全社員参加というのも謎だし。
 ま、人数が70人もいないから可能な年度一番最初の社内イベントってヤツなんだけど。
 お爺様の趣味に違いないんだろうけど、きっと、お爺様が社長っていうよりはガキ大将で、各部署の代表がそのグループメンバーみたいな感じだからだろうな、と。だから重役会議で内容決めるんだろうな、と。
 ヘンな話だけど。
 みんなで遊んで騒ぐの大好きだしね。
 だからあの会社にいられるというか、何というか。
 
 苦笑しつつ部屋に戻って、パソコンの隣にやっぱり置き去りにされていたA4の用紙を確認してバックに仕舞う。
 これ忘れたら今日の会議で私が怒られるハメになる。
 新人歓迎会の案を用意してなかっただけで怒られるのも、謎だけど……。

 もう忘れ物はない筈と脳内反芻しながら駐車場までやってきて、私の顔が引き攣ったのはきっと仕様。

「何してるの?」
「かーぎ」

 駐車場にいるのは、いい。
 私の車で通勤するから、そこにいるのも間違ってない。
 でも。

「琥珀は助手席」

 何で運転席側に立ってるのか……。

「オレ免許持ってるって」
「知ってるけど」
「会議の内容、説明してよ」
「……やっぱり覚えてない? そうだろうなとは思ってたけど」
「さっすが琳子。オレの事は何でもお見通しだな!」
「嬉しくない」
「即否定!? 酷いよー。褒めたのに」
「だから、嬉しくない」
「ううう、琳子がいぢめるー」
「朝から五月蝿い。それで、何でそっちにいるのよ。それは私の車」
「知ってるよー。だから、行きながら話聞くのに。流石の琳子も書類とか見ながら運転無理でしょ?」
「簡単な内容くらいなら覚えてるわよ」
「いや、きちんと言ってもらわないと」

 にへら、と反省ゼロの顔。
 そうか。これは、あれか。
 全く覚えてないって事ね……。

「事故らないでよね」
「琳子ってオレに対してだけ冷たくない?」
「甘やかすとロクな事にならないから」
「うう、酷い」

 そう言いながら手を差し出すし。
 琥珀の辞書に“反省”って文字は絶対存在してない。
 わかってない、わかってないし。

「あんたが免許取った直後に、竜馬さんの車大破させたの忘れてないから」

 ぴしり、と硬直。
 私が過去、琥珀のせいで入院した事件その2。
 あの時は本気で死にかけて臨死体験してたんだから、同じ過ちを2度繰り返すわけにはいかない。

「琳子、オレのこと、更に恨んでる!?」
「どうしてあんたが無傷で私が集中治療室だったのか、未だに謎」
「“あんた”って言ってるよ、琳子!!」
「五月蝿いわね。ぶつぶつ言ってないで、あんたは助手 「時間ないんだろ!」

 今度は私が硬直する番。
 時計を見やる。

 7:23―――――。

 会社まで車で片道27分。今日は全社員朝礼があるから、7:45には到着してないと、まずい。
 社長が朝礼に遅刻なんてありえない。
 50分から朝礼は始まるけど……ぎりぎり!?

「琳子、固まってないでかーぎ!! 助手席乗って、会議の概要説明っ!!」

 概要なんて言葉、良く知ってたね。
 って、違うでしょう。私。落ち着け。落ち着―――

「琳ちゃん! 何やってるの、早く早く!!」
「もとはと言えば、あんたが起きないのが悪いのよっ!!!!!」

 ごすっ。

 頭をかかえて蹲る琥珀に、私は深呼吸。
 全然落ち着けてない、私……。

「安全運転で朝礼に間に合うように、更に、速度違反にならないよう飛ばしなさい」
「琳ちゃん、それ無理難題だからっ!!」

 ちゃり、と鍵を目の前に吊るされ鍵をしっかり受け取る琥珀。
 どうでもいいけど、何で涙目なのよ……泣きたいのはこっち。泣けるものなら。

「琳ちゃんって呼ばないでくれる?」

 じろりと一睨みして、さっさと助手席に回り込んでドアを開く。

「いつ鍵あけた!?」
「さっさと動く! 時間ぎりぎりなんだからっ!!」
「は、はいぃっ!」

 慌てて車に乗り込む姿に、全身で息を吐き出した。
 朝からどうしてこんなに疲れないといけないんだろう……。

「しゅっぱつしんこー!!」

 水を得た魚のような顔になった琥珀の横顔に、もう一度溜息。
 エンジンがかかって動き始めた車に、私は手持ちの鞄を開く。
 とりあえず、時間はかなり押してる。
 更に、つくまでの間に、興味のない事は聞いた傍から忘却の彼方へ追いやるこの脳に、しっかり話をしないといけない。

「あ、そーだ」
「何?」
「今日って、あの話もあったよな?」
「あの話じゃわからないけど」
「体感RPG!!」
「いちいち叫ばなくても聞こえる」
「う……ごめん」
「試作品の話ね、確かにあったけど……。体験プレイヤー募集要項とか、正直そっちは営業に任せてもいい気がするし、きちんとした内容説明とかで終ると思うけどね。その話は。言わなくても、それ中心で進めてたふしがあるから、皆大まかには知ってるだろうし」
「オレやりたいんだけど!!」
「そう」
「え、それだけ?」
「社長業務終らせた後なら別にいいけど。それだけの余裕があれば」
「それってダメって言ってるじゃんかー!!」
「それより重要なのがあるでしょう、今回は。確かに、重役会議って言っても、ほとんど身内と化してるし、ほぼ毎日会わせる顔だけど、でもね? 琥珀が代表取締役としての務めをしっかり果たしてもらわないと困るの」
「うう、わかってるよぉ」
「わかってないから言ってる。今のまま行ったら、会社が倒産するよ? 将来」
「う……それは困る」
「だったらきっちり仕事する。会議の内容なんて前日にきちんと確認して、頭に叩き込んでおきなさい」
「……はい」
「それじゃ、しっかり叩き込みなさいよ」

 今は時間が惜しいから。
 残り時間20分。
 間に合うか不安だけれど、それ以上に琥珀の方に不安が有り過ぎる。
 一息ついて、資料をめくる。ページ数は5枚と少ないのに、どれもこれも小さい文字がびっしりと。
 どうして昨日と同じ事をしてるんだろうと、頭が痛いけれど。
 一つ一つ簡単に説明しながら、出席者の名前も挙げて。
 社員の顔と名前は覚えておくよう散々言っておいたから、そこは大丈夫のようで少しだけ安堵した。
 


 けれど。
 私は、本当に、一番大切な事を忘れていた。
 “琥珀に関わるとロクな事がない”。
 身にしみてわかっていた筈なのに、このときの私は、すっかりそれを忘れていたのだ。
 全ては―――――後の祭りだった。



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